NYでは雪が降り積もり、マイアミ帰りの私にとっては文字通り凍える寒さです。
冬のNYも好きですけどね!
今日は多くの方にご質問いただいていたスイスフランの将来についてのスペシャルレポートをお送りします。
スイスフランは1月15日の大暴騰の後、これからどうなっていくのでしょうか。
投資アドバイザーは私、キアナ・ダニエルです。イラン出身のユダヤ人で、日本留学中にFXをはじめ、現在はNYから様々なトレード情報を発信しています。
スイスフランは法的要求である最低40%の金準備の裏付けのもと、実質0インフレの通貨として長らくセーフヘブンと考えられてきました。
しかしながら1920年代にまで遡るこの金との関連付けは国民投票の末2000年5月1日に終了しています。
2005年3月までに金売却プログラムを終え、スイス国立銀行は総資産の20%に当たる1.290トンの金を保有することになりました。
2014年の11月に行われたスイスフランに対する20%の金裏付けの復活は「スイスのゴールドイニシアチブ」に関する国民投票の結果、却下されました。
2011年から2014年まで、スイスフランにとっては重要な決断がなされます。
2011年3月、ギリシャのソブリン危機に憂慮した投資家が安全資産を求めたため、USD/CHFは0.91のレベルにまで下落しました。2011年8月までには0.769を下回り、行き過ぎた過大評価に対抗するためスイス国立銀行はここでスイスフランの流動性供給に乗り出します。
同時にスイスフランは対ユーロにおいてもパリティに達しつつあったため、これを深刻に捉えたSNBはユーロに対する上限を設けることにしました。
つまりEUR.CHFが1.20のレベルを下回らないよう介入することにしたのです。
この発表に反応して、15分の間にスイスフランはユーロに対して1.22から1.12まで、そして米ドルに対しては9%引き下げられました。
介入は長らくスイスフランをセーフヘブンと考えていた通貨トレーダーに大打撃を与えました。
結局フランは対ユーロ8.8%、対ドル9.5%、それから16の通貨に対して発表日のうちに少なくとも8.2%下落しました。
ユーロに対する下落としては最大のもので、SNBは予めドイツマルクに対して1978年の通貨レートをターゲットに設定し、高インフレの対価とともにこれを維持しました。
この取り決めは歴史的な暗黒の木曜日、2015年の1月15まで続きます。この日、スイス国立銀行は突然にこのペッグを取りやめ、スイスフランはたった数分でユーロに対して30% も上昇しました。過去1000日間の変動分すべて合わせたよりも大きな動きが、たった数分の間に変動したのです。
スイスフランショックの影響
-スイス金利は-0.25%から-0.75%に引き下げられた。
-スイスの口座維持費用が値上がりした。
-急激なユーロ安がスイスの輸出産業を脅かす恐れがある。
そして多くのFXブローカーが問題を抱えることになりました。
スイスフランショックがFXブローカー業界の整理につながることは明白です。
LeapRateは最悪ともいえるショックの余波、Alpari UKの破産とそれに伴うKPMGとのパートナーシップ締結などを報じました。
FXCMは推定2.25億ドルものマイナスを抱え込むことになり、結果的に一部自己資産要求を満たせず違反となりました。
しかしながらその他のブローカー、たとえばIronFXは今回のショックによる影響は厳格なリスクマネージメントのためほぼないとコメントし、IGグループは巨額の損失に苦しむFXブローカーの買収に乗り出そうとしています。
なぜSNBはペッグを終了させたのか
1.スイスの政治的問題
スイスの人々はSNBが巨額の外国為替のための準備金を抱えていることに怒りを覚えていました。
それほどの紙幣を刷り続けていれば、いずれはハイパーインフレーションに陥ってしまうと考えられているのです。
実際にはこれは正しいとは言えません。スイスのインフレ率は低すぎるくらいで、決して高過ぎることはないのです。
しかしながらハイパーインフレーションはスイスで盛り上がっている政治問題であり、11月の国民投票の結果SNBがこれ以上の準備金を用意することは難しくなってしまっていました。
2.欧州中央銀行(ECB)の金融緩和
SNBはさらに腹立たしいリスクを抱えていました。発表当時の数週間でさんざんに期待されていたECBによる「金融緩和」の導入です。
これがECBによるユーロ圏の政府債購入のための資金増加を含んでいたため、本当に実施されるとユーロの価値が下落する恐れがありました。
ユーロが下落するとペッグを維持するためにSNBは更に大量のスイスフランをする必要性があったのです。
3.ユーロ安
2014年を通して、ユーロは他の主要通貨に対して下落を続けていました。
結果、スイスフランは(ユーロに対してペッグされているため)同様に通貨安に振れていました。
2014年中、スイスフランはSNBの判断でいくらかの値上げを認められていたにも関わらず、ドルに対して12%、ルピーに対して10%も下落しました。
スイスフラン安はすでにスイス輸出の20%を占めるアメリカとインドへの輸出を促進させており、SNBはもしスイスフランがそれほど過大評価されているのでなければ、これ以上通貨安をあえて続ける必要性はないと論じています。
スイスフランのこれから
FXチャートを見てみると、USD/CHFは一目の雲の上で0.93のレベルにまで回復しましたが、EUR/CHFは未だ弱気にとどまっており、十分なリバウンドが見られません。
長期的には、EUR/CHFは0.90、1.00、1.10の3つのキーレベルのいずれかに落ち着くと考えられます。数値が高ければ高いほどスイスの経済が高評価であるということですが、GDP、インフレ率ともに健全といえる水準は下回っています。
これらのテクニカル分析から、今後のスイス経済について3つのシナリオが考えられます。
-通貨高のために輸出が伸び悩む
-通貨高のために輸入がしやすくなる
-EUR/USDレートが下がることで投資が活性化する
-通貨高のために平均インフレ率が実質的に改善する
-輸入品が消費者物価指数で27%の比重を占める
-エネルギー価格は既に価格レベルに多大なデフレ圧力を与えている。
SNBがペッグを終了させた理由の一つはスイス国民のハイパーインフレーションへの危惧という多分に政治的なトピックですが、実際のインフレ率は低すぎることはあっても高すぎることはありません。このためスイスによるスイスフラン安への介入が再び行われる可能性も残っています。スイスフラン安は合わせてスイス貿易の20%をしめるアメリカとインドへの輸出を促進する効果があります。
以上がスイスフランについて知っておくべき重要なポイントです。このビデオを気に入ってくれた方は、ぜひお友達にもシェアしてくださいね。
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